増加する“未経験男女”を取り巻く深刻な状況 共通点は「経済的な困窮」「実家暮らし」「親から精神的に自立できていない」

新しい扉

ヤフー引用

現代日本で、男女の“未経験率”が上昇しているという。東京大学特任研究員の坂元晴香さんらが2022年7月に20~49才の男女8000人に行ったオンライン調査では、20代女性の未経験率が29.7%である一方、20代男性は43%が性交渉の体験を持たないという結果になっている。

 国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、男女とも各年代で調査年が新しくなるほど未経験率が増加する傾向にある。特に2021年調査の18~34才の未婚男性の未経験率は44.2%。こちらも半分近い数字になったという衝撃のデータであり、2015年の前回調査よりも増加した結果となった。

家を維持するための「家父長制」の影響

 2015年に刊行された『ルポ中年童貞』で数多くの当事者を取材したジャーナリストの中村淳彦さんは彼らを取り巻く状況の深刻さを目の当たりにした。

「低収入である現状を嘆き、職場の環境の愚痴を延々と話し、後輩など自分より立場が下の人には強く当たり……ぼくが取材した童貞たちはかなり悲惨な状況でした」

 中村さんが続ける。

「取材対象者の多くが、非正規など低賃金の労働者で怨嗟を抱えて生きる、社会からも女性からも見向きもされない存在でした。昔なら正社員になれば収入が安定して結婚もできたでしょうが、非正規ではそれが叶わない。10年前よりも非正規化が進むなか、世の中から見放された中年童貞の行く末は厳しいと言わざるを得ません」

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 中村さんは取材を重ねるうちに、経済的な問題に加えて、未経験のまま年を重ねた子供たちにはもう1つ共通点があることに気がついたと話す。

「子供たちのほとんどは実家暮らしで母親に身の回りの世話をしてもらい、精神的にも自立できていなかった。

 特に中年層の母親世代は専業主婦も多いうえに、父親が家庭において全権を持つ家父長制が当たり前という家も少なくなかった。“父親が母親よりも上”という家庭内の雰囲気と、母親との密すぎるコミュニケーションの中で過ごすうちにゆがんだ異性観を持つようになった子供たちも少なくないのではないかと思います。自立するには実家から出るしかないのですが、低収入のためそれも難しいのが現状です」(中村さん)

 母親からの“過干渉”も童貞率を増加させる遠因ともとれる。

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「妊娠したらどうしよう」「失敗したらどうしよう」

 一般社団法人日本家族計画協会会長で医師の北村邦夫さんも日本の夫婦関係や家族を取り巻く制度に問題があると指摘する。

「人間も動物なのでセックスして当たり前だけど、欧米と違って日本の家庭では子供の前で夫婦のスキンシップを取ることが少なく、ある程度の年齢まで性的な情報を隠そうとする。それゆえに正しい知識がわからないままセックスを神格化している若者も少なくない。『妊娠したらどうしよう』、『失敗したらどうしよう』と怯えてしまい、性交渉を楽しむことができません。

 一方でフランスでは娘が15才くらいになって彼氏ができると母親が娘を婦人科に連れて行ってピルの処方をしてもらうと聞いたことがあります。つまりかなり初期の段階で情報がオープンになっているうえ、セックスにおいて男女の対等な関係を築くための教育がなされているんです。

 対して日本では男女平等が進まず、避妊はコンドームか腟外射精に限られる一方で『妊娠させたのは男のせい』との考え方がいまも根強いといえます。これでは男性はその偏った責任の重さに女性を誘えなくなってしまうのも無理はない」

 結婚制度もセックスにブレーキをかけていると北村さんが続ける。

「フランスやデンマーク、スウェーデンなどは婚外子を認め、結婚していなくても子供を産める環境がある一方で、日本では結婚していないと子供を持ちづらい。人工妊娠中絶手術を受けた理由を調査した際も日本人は『相手と結婚していないから』と答えるケースが多いですが、フランスやデンマークの人にとっては、到底理解できない驚くべき理由だといえます。妊娠=結婚という流れが主となる日本社会では、婚姻関係に魅力を感じない男性が性交渉に踏みとどまってしまうのかもしれません」

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