都市伝説や予言、暗いニュースを見て不安になる人が増加中? 精神科医が教える《感情の境界線》の守り方。不安や心配はどうすれば軽くなる?

新しい扉

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悩む女性

「何か悪いことが起こるのではないか」と不安になる気持ちに、どう向き合えばいいのでしょうか(写真:Graphs / PIXTA)

大きな災害が近いうちに起きる、という噂が広がったり、地震や噴火のニュースに不穏な空気を感じたり。混沌とした社会の中で、次第に大きくなっていく不安や心配に、私たちはどう向き合いながら生きていけばいいのでしょうか? 精神科医・藤野智哉氏が、「負の感情」に賢く向き合い、人間関係の悩みを軽くするヒントをつづった『嫌な気持ちにメンタルをやられない 不機嫌を飼いならそう』から一部を抜粋し、考えていきます。

心配が過ぎて検索で「都市伝説」までキャッチ

2024年元日の能登半島地震では甚大な被害が発生し、今なお多くの人々が避難生活を余儀なくされています。近い将来には南海トラフ地震が発生するともいわれていますから、不安や恐怖心を抱いている人は少なくないと思います。

まだ起きてはいないこと、いつ起こるかわからないことであっても、考えないようにするのは難しいものです。考えないようにしようと思えば思うほど、そこに意識が向きますからね。

地震や大災害に関してついつい検索してしまい、都市伝説や予言などを見ては不安が増大……。そんな負のループに陥っている人にもやれることがあります。

自分の予測や不安の中で「当たったこと」「当たらなかったこと」を書き出してみることです。

こういうタイプの人は毎日のように不確かな情報を見て「来週には悪いことが起こる」などとおびえていますが、結局、悪いことは起こっていないですよね。

「この間は悪いことが起こらなかった」「その前も起こらなかった」と書き出していってみると、当たったことばかり記憶に残っていても、実際は当たらないことのほうが圧倒的に多いと気づくはずです。それが数字として見えてくると、少し自分のお守りになったりすると思います。

さらに「今まで9割が当たっていないんだから、今回だって9割はきっと当たらないよね」という考え方ができるようになってくると、今までよりも不安にとらわれにくくなったりもします。

不安の中にいると「絶対にそれが自分の身に降りかかってくる」と思ってしまいがちですが、今までの予想は9割当たっていない。その状況を客観的に見られるようになるといいと思います。

いちばんいいのは、何か違うことに意識が置き換えられる瞬間が増えていくこと。何かに夢中になっている瞬間は不安や恐怖を忘れることができます。

ただ、なかには病気が原因で不安の症状が出ている場合もあります。病気からこういった症状が出ている場合は適切な治療が必要になります。

病気未満の人の中でも、同じストレスに対ししんどくなる人とならない人がいるのはなぜでしょう。もちろんストレス耐性もありますが、ストレスをいかに処理するかという本人の能力によるところも大きいんです。

ストレスになる出来事が起こったとき、それをどう認知してどう処理していくかって、その人の技術です

たとえば怒っている人がいたときに「この人は怒っている。きっと私が何か悪いことしたんだ、しんどいな」と思うのか、「この人、なんでこんなことで怒ってるんだ?しょうもない人だな」ととらえられるかによって、自分が相手の怒りを食らうかどうかが変わります。

いつもしんどくなってしまう人は前者のようなとらえ方をしているわけですが、後者のようなとらえ方ができるようになると、同じ世界に生きていても受けるストレスが減る。その結果、不安や恐怖などの症状が出にくくなるということがあります。

僕たちは物事をとらえるとき、あるがままとらえるのではなく、自動的、無意識的に意味を乗せて認識しています。そこでよくない意味づけをしてしまうと毎回毎回、出来事を悲観的にとらえて「私にばっかり悪いことが起こる」などとうまくいかないとらえ方をしてしまうわけです。

世の中のことって、ある程度はバランスよくできていて、自分ばっかりに不幸なことが起こるわけではない。なのにそう思ってしまうのは、自分自身が物事を不幸にとらえている面があるからだったりもします。

人は誰でも物事をとらえて、感情が生まれて、行動が生まれます。だから「嫌な出来事があった→怒りという感情が生まれた→攻撃をしてしまう」という失敗パターンが発生することもあります。

物事をとらえた後に生まれてくる感情は変えられません。出来事は勝手に起こってくるし、物事をとらえてしまうとそれに対して勝手に感情が生まれますから。

でも、物事をとらえる際の認知を変えることができれば感情が変わり、行動が変わります。物事、認知、感情、行動の中で自分で直接変えられるのは、認知と行動だけなんです。

【まとめ】物事のとらえ方=認知を変えることができればその後に生まれる感情と行動が変わってきます。

その心の痛みは「共感疲労」かも

地震や台風などの災害、世界各地で起こっている戦争や紛争、子どもの虐待や性犯罪など、容赦なく飛び込んでくるニュースに心を痛めている人も多いと思います。

自分の身に起こったことではないのに、ニュースに接することで被災者や被害者に共感して、自分自身がつらくなったり疲れてしまったりすることを「共感疲労」といいます。

そして、スマホには自分が見たニュースに関連したニュースがどんどん上がってきますから、「ニュースを見る→つらくなる→別のニュースを見る→やっぱりつらい……」という共感疲労のループから抜け出せなくなってしまいます。

じゃあ共感疲労をどうやって減らすかというと、一番はつらい情報に接する時間を減らすことです。

「スマホを見ない時間なんてつくれない!」という人がいるかもしれませんが、今はアプリで「スマホを何分見ています」と時間を教えてくれたり、何分以上使ったらお知らせが来たりする機能がありますよね。

結局お知らせが来ても無視して見続けることにはなるんですけど、一つ邪魔をしてくれる存在にはなると思います。

検索エンジンには、同じようなニュースが追いかけてこないようにする設定がありますし、iPhoneだってプライベートブラウズで読んでいれば履歴に残らず、関連する内容が上がることはなくなりますから、そういうところを見直してみるのも一つの手だと思います。

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共感疲労には、自他の境界のあいまいさが影響します。「自分のことと社会で起こっていることは別、自分は自分」という、自分と他者を区別する境界線がしっかり引けないと心は容易に影響を受けます。

だから暗いニュースを見て落ち込んだりしたときは境界線がしっかり引けているかどうか、考えてみましょう

マインドフルネスのように「今ここ」に目を向け、自分は安全に切り離されていて、ここには危険なものが存在しない現実、というのを再確認してみることもいいと思います。

自分がしんどくなっては元も子もない

共感疲労は災害支援者や看護師さんなど、支援職を選ぶような性格の人に多いといわれています。

たとえば災害支援のボランティアでは、被災地で大変な思いをしている被災者の方と、支援者として行っている自分との境界がなくなってしまい、相手の立場や感情に入り込みすぎてしんどくなってしまう人がいます。

そういうときに「あなたはそういう立ち位置じゃないでしょ」と引き戻す役目の人間が必要なので、ボランティアなどに行く際はひとりではなくほかの人と一緒に行ってください、と言われることもあります。

つらい思いをしている人に共感して一緒に泣いてあげられるのは素敵なことだし、聞いてもらう人にとっては、あなたはいい人かもしれません。でも、深入りしすぎてあなたがしんどくなっては元も子もありません

だから、ちゃんと自他の境界を意識しておくことが大切なのです。

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