私立大学に本格的な「倒産」時代がやってきた…!
私立大学に本格的な「倒産」時代がやってきた…!
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コロナ禍で少子高齢化と人口減少が加速し、
衰退する日本社会はどこに向かうのか?
『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』著者の
河合雅司氏が、人口減少ニッポンでビジネスの
世界に起こることをデータから描き出す
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①
私立大学の深刻な財務状況
私立大学が、本格的な「倒産」時代を迎えようとしている。
文部科学省が、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)の
調査結果(2020年度)を紹介しているが、599大学のうち222校で財務状況
(事業活動収支差額比率)がマイナスだ。
とりわけ、地方の中小大学が悪化しており、43.3%にあたる145校が赤字だ。
このうち、マイナス幅「20%以上」は53校に及ぶ。
同じく都市の中小大学も36.0%にあたる73校が赤字で、
うち「20%以上」のマイナスとなったところが30校だ。
財務省の資料によれば、2019年度決算の状況のまま推移したならば、
約2割にあたる121の学校法人が将来的に資金ショートを起こす恐れがあるという。
こうした状況を招いている大きな理由は、入学者の定員割れだ。
とりわけ、2021年度入試は深刻であった。私学事業団の
「私立大学・短期大学等入学志願動向」によれば、
4年制大学の入学定員充足率(入学定員に占める入学者の割合)が
初めて100%を下回り、99.81%となったのだ。
定員割れしたのは277校(前年度比93校増)で、
大学全体に占める割合は15.4ポイント増の46.4%となった。
これは、2008年度の47.1%に迫る水準である。
277大学のうち、充足率60%台が34校、50%台が6校だ。
「50%未満」という危機的な大学も7校あった。
私立大学全体で100%を割り込んだのは、コロナ禍の影響が主要因である。
志願者数が前年度より53万3353人も減ったからである。
率にして12.2%もの大幅減少だ。経済活動の停滞に伴い
保護者の収入が少なくなり、受験生に併願校を減らしたり、
受験そのものを断念したりする動きが広がったのである。
これまで日本人受験生の目減り分を穴埋めしてきた留学生も、
来日が難しくなったことで大きく減った。
地方からの受験生が多い東京都の私立大学も例外ではなかった。
一部の人気校が数字を押し上げたことにより定員充足率の
平均は100.8%を保ったものの、3分の1にあたる39校が定員割れした。
オンライン授業が長期化したことで
「高い下宿代を払ってまで東京の大学に行く意味がない」と考えた受験生や、
感染確率の高い東京圏を敬遠した受験生が多かったとみられる。
②
人口減少なのに定員増?
コロナ禍以外にも要因はあった。2021年度に大幅な入試改革が予定されていたために、
前年度の受験生には浪人を避けようとする人が多かったのだ。
このように2021年度入試は特殊な要因が重なって
例年以上に定員割れが拡大する結果となったが、
中長期的に考えると状況はさらに悪化しそうだ。
長年の出生数の減少による影響で、
今後18歳人口がハイペースで減り続けるからである。
文科省の資料で18歳人口の推移を確認すると、
1992年度の204万9000人がピークだった。2020年度は
約116万7000人にまで減っているが、2040年度は約88万人になる見通しだ。
これから20年で現行より25%ほど減るのである。
しかしながら、問題はこれにとどまらない。2021年度入試において入学定員が、
前年度より4150人増えていた。文科省が、18歳人口が減少することを知りながら
大学新設や入学定員増を認め続けてきたことが原因である。
財務省の資料が1992年と2020年を比較している。18歳人口は43.0%減ったが
大学数は384校から615校へ1.60倍、入学定員は35万6000人から49万1000人へ
1.38倍となった。これでは定員割れが拡大するのも当然である。
文科行政の迷走とも思える動きの裏には、大学進学熱の高まりがあった。
それは18歳人口の先細りに頭を悩ませていた大学経営者たちにとって
当面の危機の回避策であり、即座に飛びついた。
高校卒業後に就職を考えていた人たちや
短大、専門学校などに進学していた人に狙いを定め
短期大学の4年制大学への衣替えや、受験生を集めやすい大学名や
学部名への変更など“マーケットの掘り起こし”を繰り広げたのである。
それがさらなる大学進学機運を呼び起こすこととなり、
新規参入を招くことにもつながった。
しかしながら、こうした手法がいつまでも続くはずがない。
18歳人口という“受験者マーケット”のパイの縮小スピードが速まるにつれて、
大学進学率の上昇では追い付かなくなってきた。
③
大学が多過ぎる…!
すでに大学進学者は減り始めている。2020年度の大学進学率は54.4%で
過去最高を記録した。文科省の推計では2033年度に56.7%
2040年度には57.4%となるが、大学進学者数は2017年度の約63万人がピークだ。
2033年度には約57万人、2040年度には2017年より12万人少ない
約51万人になるとしている。
そもそも、大学進学率が青天井で上昇し続けることなどありえない。
短大入学者、専門学校入学者、高専4年次在学者数を含めた
2020年度の進学率は過去最高の18歳人口の83.5%を占めるに至っている。
どう見たって大学が多過ぎる。普通に考えれば
「倒産」や統合などの再編が避けられないが、いまだに
新規の設置認可申請をする動きがあるというのだから
大学業界は何とも不思議である。
財務省の資料によれば、2019年度に定員割れした
255校(私立大学全体の約45%)のうち、
134校で事業活動収支差額比率がマイナスだったが
定員充足率の低い大学であっても定員の縮小を検討しているところは一握りだ。
むしろ「増やす」あるいは「現状維持」としているところが多いというのだから驚く。
朝日新聞・河合塾「ひらく 日本の大学 2018年度調査結果報告」によれば、
定員充足率50%以下の大学の33%が「増やす」、67%は「現状維持」と
回答しており、「減らす」とした大学は無い。
充足率50%台の大学も「増やす」が25%、「現状維持」が63%で
「減らす」はわずかに13%である。
定員充足率が50%以下、50%台の大学は、いずれも中長期的に
入学者数についても「増やす」か「現状維持」と回答している。
こうした答えとなったのは、定員割れを起こしている
大学への私学助成の減額が理由だ。経営状況を改善に向かわせるには
入学者数を是が非でも増やすしかないという理屈である。
とはいえ、財務省によれば、2016年度から2020年度の
5年間にわたり定員充足率が8割未満の大学は25校に上っており、
明確な展望があるとは思えない。
④
公立化という生存戦略
他方、地方の中小大学には公立化で生き残りを図ろうという動きも目立つ。
自治体から地方交付税によって運営費が拠出されるため授業料が抑えられ、
しかも「公立大学」というブランド効果も大きく、
志願者数増に転じた成功事例もある。
地方自治体にとっても、公立化で大学を存続させることはメリットがある。
地域内の進学が進めば、都会流出を防げるとの皮算用だ。
双方の思惑が一致して公立大学化の流れは今後も大きくなりそうだが、
これに対しては「延命策に過ぎない」との見方も強い。
一時的に学生を集めるのに成功しても、全国的に18歳人口が激減していく以上、
いつまでも安泰とはいかないためだ。いずれ定員割れしたならば、
交付金があっても運営費用が不足し、自治体財政に重くのしかかる。
そもそも、若者の定住につなげたいとの自治体側の思惑も、
うまく運ぶとはかぎらない。公立大学になれば受験生が全国に広がり、
卒業後に出身地などに戻って就職する学生も増えるだろう。
全国から受験生が集まることで入試の難易度が上がり、
地元の受験生が合格しづらくなればかえって地域内就職率は下がる。
私立大学にも私学助成金が支給されている。公立化するにせよ、
私立大学のまま存続の道を模索するにせよ、
大学には少なくない額の税金が投入されている。
一方、人口が激減していく日本において大学に求められるのは
国際競争力を強化するための人材の輩出だ。
人口減少に伴って必然的に歳入は減り、日本の財政は年々縮小していく。
入学者だけでなく優秀な教員を集めることも困難になっていく。
こうした状況下で多くの大学に薄く広く予算をつけていたのでは
日本は各国に太刀打ちできなくなる。それよりも、
18歳人口が減るのに合わせて重点強化する大学をいくつか定め、
そこに必要な財源を集中的に配分することが重要だ。
人口減少社会においては、あらゆる分野で人材が
不足していくことも考えなければならない。どの分野に、
どれぐらいの人数の人材を育成するのかについて国家としてビジョンを描き、
大学教育の在り方を再定義する必要がある。こうした課題をクリアしながら、
研究・教育の質の高さを維持していくには、
過剰な大学数を整理・縮小しながら進めるしかない。
存続すること自体が目的化し、合格ラインを下げてまで学生集めに
奔走する大学の救済を考えている余裕など、いまの日本にはないのである。
大学数の整理・縮小にあたっては、もはや国立大学、公立大学、
私立大学の枠組みや都道府県といったエリアにとらわれている場合でない。
激変する社会のニーズに合わせて大学数を絞り込み、
学部の統廃合を進めることである。
「戦略的に縮む」ことによって人材や予算の集約化を図り、
世界に渡り合える“特色ある大学”を1つでも多く誕生させなければ、
人口減少社会の中で「未来」を見出すことはできなくなるだろう。










