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単身と家族の「外飲み」推移
コロナ禍により、外でお酒を飲む機会がめっきり減ったという人も多いだろうが、現在どれくらい復活しただろうか。
家計調査の品目分類には外食費の中に飲酒代という項目があり、これが「外飲み」消費支出とみなすことができる。なお、メディアが家計調査のデータを使用する際は、基本的に二人以上世帯の数字である。しかし、既に単身世帯が世帯類型ではトップとなっている今、いつまでも二人以上世帯の数字が全体の家計を代表するものとはいえないだろう。
家計調査には男女単身世帯の統計もある。男女単身の勤労世帯と二人以上の勤労世帯のそれぞれの年間当たりの「外飲み」消費金額を比較すると、単身と家族とでは当然違う傾向が売らわれる。
データは、単身男女は34歳以下と35-59歳の年齢区分だが、二人以上世帯は10歳階級のデータのみなので、39歳以下と40-59歳で分けている。

これで見ると、2002年時点ではもっとも「外飲み」支出金額の多かった34歳以下単身世帯が右肩下がりで、コロナ禍という特殊事情で大きく下げたあとの2024年もコロナ前の2019年の数字にも達していない。
一方、35歳以上の中年単身男性は、2002年に比べれば全体的に下がっているとはいえ、コロナ禍でもたいして下げらなかった上に、2024年は2015年レベルにまで復活している。
単身女性も34歳以下は、絶対額は男性より低いものの推移は男性と同様だが、35歳以上の場合は、終始一貫して増えもせず減りもせずという傾向。中年単身女性はそれほど「外飲み」をしないようだ。
二人以上世帯は、世帯主の年齢に限らず、全体的に「外飲み」消費は少ない。
家族が「家飲み」しているわけでもない
こうしてみると、外食産業における居酒屋など酒を提供する店というのは、いかに単身男性によって支えられているかがわかる。
ちなみに、国民生活基礎調査によれば、2002年の現役単身世帯数(65歳以上性主を除く)は、2002年に約740万世帯から、2023年には約994万世帯へと34%増である。2023年の児童のいる世帯数が約984万世帯であるから、単身世帯の方が児童のいる世帯より多い。世帯数が多い上に、一人当たりの消費する客単価が単身世帯の方が高いわけなので、「外飲み」市場の中心は単身者なのである。
もっとも、飲酒店は個人だけがお客さんではない。家計調査には表れない法人消費需要というものもある。要は「会社経費飲み」である。ここの比率も少なくないので、単身者だけが飲酒市場全体を支えているとまではいわないが、とはいえ中心であることには間違いがない。
一方、「外飲み」はしない二人以上世帯は「家飲み」をしているだけではないかと思うかもしれない。「家飲み」の金額を家計調査の酒類消費金額で比較したものが以下である。
こちらは、二人以上世帯も5歳階級別のデータがあるので単身世帯と年齢をあわせてある。

ご覧の通り、二人以上世帯だからといって単身世帯より極端に「家飲み」が多いわけではない。二人以上世帯は多くが大人二人分である。本来なら倍近く差があってもいいのに、この程度の差しかない。むしろ、35-59歳では、コロナ禍前まで中年単身男性一人の種類購入金額の方が一家族分よりも多かった。2022年に限っては、中年単身女性も金額が増え、単身男女も二人以上もほぼ同額となった。
このように、「外飲み」は圧倒的に単身の方が多く、「家飲み」もイメージしているほど家族と単身との間に大差があるわけではない。「外飲み」「家飲み」あわせた「酒」の合計消費額としての優良顧客とは単身男性なのである。
若い単身の酒離れ?
とはいえ、気になるのは、34歳以下の一人当たりの消費金額がコロナ禍を除いたとしても全体的に低下傾向にあることだ。若い単身者が外で酒を飲まなくなったということでもある。
しかし、これを「若者の酒離れ」と断じるのは間違いである。
本当の酒好きなら家でも飲むだろうが、「家飲み」の数字を見てわかる通り、そもそも酒類購入金額は20年以上あまり変化はない。第一、「外飲み」は「酒が好きだから」というより「皆で飲むのが好きだから」と言った方かよい。
そもそも若者は誰と酒を飲みに行っているのか。単身者だからといって、いつも「ひとり酒」をしているわけではない。
コロナ前の調査データとして、インテージが実施した2014年『仕事帰りの外飲み事情 』調査(但し、こちらは単身や未既婚別ではない)によれば、「職場以外での友人」との「外飲み」は20-30代男女とも平均すれば大体3割程度で、もっとも多いのが「職場の同僚(上司含まず)」で20代男性で62%、30代男性で69%、20代女性55%、30代女性63%である。
多分、単身の「外飲み」消費額が高かった2002年はもっと職場飲みが多かったものと推測される。そして、若い単身者の「外飲み」金額が減ったのも、それだけ職場の人間との飲み機会が減ったことによるのだろう。
若者の「外飲み」が減ると結婚が減る
若い単身者の「外飲み」の減少およびその内訳としての職場関係の飲み会の減少、これらふたつは婚姻減少と無関係ではない。
出生動向基本調査における「夫婦の知り合ったきっかけ」で「職場」は近年大きく減少している。職場で知り合った夫婦の割合を実際の初婚数と掛け合わせて「職場結婚(初婚)数」を算出すると、2002年は20.5万組だった。それが2021年では8.5万組にまで激減している。減少率は約6割である。
何も職場の飲み会があれば結婚数が増えると言う因果推論を言いたいのではない。職場は結婚相手を見つける場ではないというのももっともな話だが、縁あって同じ会社に就職し、たまたま一緒に仕事の苦楽を共にした間柄において、親密性が生まれるのも自然のこと。

しかし、昨今では職場の異性を飲みに誘うことすら「セクハラ扱い」とされるリスクもあり、回避する傾向が強まっていることも確かだろう。このままいけば「職場結婚」は「お見合い結婚」のように絶滅していくのではないかとすら思う
ちなみに、結婚した夫婦のうち夫婦共にお酒を飲む同士の割合がもっとも高く、全体の半数を占めるし、幸福度も高い。
参照→「酒を飲む夫婦・飲まない夫婦・片方だけ飲む夫婦」それぞれのマッチング比率と幸福度の違い
「孤独のグルメ」ならぬ「孤独のオサケ」もまた一興ではあるが、独身で40歳も過ぎれば思う存分(否応なく)できるようになる(しかできなくなる)ので、若いうちは職場の仲間ともっと「外飲み」を楽しめるような環境が必要なのではないだろうか。

